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segunda-feira, 5 de julho de 2004

とても恥ずかしくて言えない。

ブラジルは移民の国だが、もう現在は移民を制限しているので、
本当の外国国籍者は、日本にいる外国人の数よりも少なくなっている。
たしか、100万人もいないはずだ。

そこで、今のフツーのブラジル人で、公用語であるポルトガル語を話せない人などまずいない。
だが、その親やお爺さんになると、移民で来た一世という人も多いので、
親族にはポルトガル語ができなかった人がいる人も多い。
だから、外国人に対しても、ポルトガル語が多少できなくても仲間に入れてくれるし、
結構親切に教えてくれる。

だんだん、日常最低限の言葉がわかってくると
次は、その会話の直訳以上に、言葉という手段をとおしての、社会のルールがわかってくる。
そして、それを今度は自分も使っていたくなる。

たけど、ちょっとこれは最初とても言えないということがあった。
初対面の女性に対する挨拶だ。 どうみても、それも歯の浮くようなお世辞だ。

「マルコス」と「アレシャンドレ」という、大人の友人がいた。
マルコスは、建築家でイタリア系。 アレシャンドレは空調工事の社長でポルトガル系だ。
よく電話がかかってきて伝言があった。
「今日、いつものところで。」(Hoje. Lugar sempre.)という伝言なので、
秘書が変な勘ぐりを入れて困った。

この二人が、よくあちこちに連れて行ってくれた。
ここで出会う女性に対して、まず冒頭から誉める、誉める、とんでもない誉め倒しをしている。
「今まで、君のような美しい人に出会ったことはない」くらいは、序の口。
「夜空に輝くどんな星よりも、君の瞳に魅了される」
「今初めて、女性の美しさがわかった。 それは君に出会ったからだ。」
とても文章では書き尽くせないくらいの、美辞麗句を駆使してくる。
あらゆる部分を取り上げて褒めそやす。
そうでない人も、それなり以上に、ひたすら讃える。

女性は、まんざらでもない顔をして、ただ「ありがとう」という。
「そんなこと無いです」とか殊勝なことはいわない。

隣で聞いていた、私はその誉め言葉を直訳して、「すげー」と、
「よくいうわ」と思っていたわけなのだが、そのうちにその女性が私の方を向いて、
「あなたは黙っていて、何も言ってくれないのね」といい、
「私のこと嫌い?」と来た。
単に、ボキャブラリーが貧困で、かつ詩人ではなかっただけのことなんだが。

私の友人たちは、との時にはもう別の女性のところで
また、先ほどのせりふをさらに増幅している。
実に真剣な顔で、心からそう思っているように。

だんだん、わかってきたこれは挨拶なんだ。
この国のやりかたなんだと。
そこから、すべてが始まるのだと。
そして、その言葉を競うことがまたルールなのだと。

だから、言うことが当たり前で、言わないことはものすごく失礼なことだったのだ。

そういったことをさらりと言えるようになった頃、
ブラジルを離れることになった。


※その後、日本で大顰蹙を買ったことは言うまでもない。
  初対面で容姿についてほめられることになれているのは、女優さんだけだ。
  しかし今は、日本の女性もずいぶん変わってきているので、
  もう奇異な目で見られることもないだろう。

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Comments

直訳を読んで、ドキドキしてしまうくらいな御挨拶ですねぇ。そうそう私は、挨拶の「Bon dia」おはよう、と良い日を!のBon diaがよくわからなくて、最初、どうして、最初と最後におはようを連発するんだろう、と考えたことがありました。今はエレベーターであった人にも、お肉屋さんにも、みんなと挨拶だけはできるようになりました。

Posted by: りこ | segunda-feira, 5 de julho de 2004 at 10:25

ブラジルって、怖いところもいっぱいありますが、
その全く反対で、親しみやすいところもありますね。
初対面でも、挨拶するし、
天気の話をしたり、景気の話をしたり。
バスの運転手も、運転しながら常連のお客と大声で話をしています。

出来るだけ良い面を取り上げていきたいですね。

Posted by: Sao_Paulo | segunda-feira, 5 de julho de 2004 at 11:54

ブラジル人は詩人か・・よい言葉です。

Posted by: ハナマリ | segunda-feira, 5 de julho de 2004 at 13:12

サンパウロさん、そうですね。スーパーで、トマトの水煮を選ぼうとしていたら、「これがトマトが大きくて、一番いいのよ」と見知らぬおばあちゃまに勧められました。ありがとうといって、それを買って、昨日のシチューに使いました。トマトは大きくて、よかったし、とても嬉しい気持ちが残っています。

Posted by: りこ | quarta-feira, 7 de julho de 2004 at 11:56

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