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sexta-feira, 19 de maio de 2006

ブラジル・サンパウロでの警察への攻撃 その8 いくつかの光景

5月12日から始まったブラジル・サンパウロ州における犯罪組織「首都第一軍団」が起こしていると思われる「一連の警察等への襲撃事件」は、一旦収まったように見受けられたが、5月17日夜から18日朝にかけて散発的にバスの焼き討ちや警察への襲撃などが起きた。

これらの事件を一つ一つを見ると、決して初めて起きたものではない。
この3-4日間に集中して、大規模に起きたことが、衝撃でなのである。

①刑務所の暴動
刑務所や拘置所そして少年院の反乱(暴動)は、日常茶飯事といっても良い。
今年は、刑務所・拘置所の反乱は、すでに40件起きていたのである。

刑務所職員などを人質に取り、手製の武器などで脅す。
屋上に上り、気勢を上げ、要求をだす。
ベッドのマットなどの什器を焼く。
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希に、刑務所職員や入所者に死者が出ることがある。
こういう場合の刑務所職員は、普段から高圧的であったり、「話がわからない」職員だったりする。
つまり職員も、命がけなのだ。
入所者は、「対立組織の者」であったり、「警察のスパイ」と見なされる者だ。

どうしてこういう事が頻繁に起きるのかと思うのだが、とにかく起きている。

定員に対して、入所者が多すぎて、ガス抜きなのかもしれない。
刑務所といっても、ただ入っているだけで、作業もないところも多い。
更生など臨むべくもない実情もあるようだ。

もちろん、全ての囚人がそういった者だけではなく、
日中は外で働ける場合や、週末は家族の元に戻れる場合などの、刑の執行方法もあるのである。

今回大きな問題としてクローズアップされたのは、「携帯電話」の使用である。
これも不思議なことなのだが、堂々と携帯電話を使っている。
サンパウロ州の刑務所では、毎月100台も見つかるそうだ。
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これらの携帯電話は、面会の家族が持ち込むほか、刑務所職員が買収されて渡しているとも言われている。
大抵の刑務所は、週末の家族の面会を認めている。
一応所持品検査はあるようだが、それでも何らかの手段があるのだろう。
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刑務所職員が買収されるということも、問題なのだが、それは単に安月給というだけではないのである。
あえて「買収」されないと、命が危ないこともあるのである。
一つの刑務所に刑務所職員など何人もいないので顔は知られてしまう、外部にいる仲間によって言うことを聞くようにと脅迫をされるのである。

刑務所職員にも、家族があることは理解してあげなければならない。
人間はそれほど強くはない。


②平和への祈り
今回の一連の事件では、当初いきなり30名もの警察関係者が亡くなった。

こういった方も含めて、更に死者が出ないように、平和を祈念するために、サンパウロの各宗教団体の代表が集まっている。
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場所は、サンパウロにおけるカトリック教会の大司教座があるカテドラルである。
ここに、ユダヤ教、キリスト教各派、仏教各派、アフリカ系宗教等々が一堂に会している。
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この日は、大司教は、バチカンでの会議で不在であったので、副司教がカトリックを代表していた。
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多くの犠牲者を出した警察関係者も参加していた。
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サンパウロの各界の名士も参加していた。
サンパウロ市長。
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労働者党のスプリシー上院議員。
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サンパウロ市人権委員長。
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③収容者の家族
日本で、刑務所や拘置所の収容者の家族の姿が、テレビに映し出されることは、まず無いはずだ。
ブラジルでは、テレビによく映し出され、インタビューに答えている。
どういうことか堂々として、収容者がいかに優しく正しい人であったかを語っていることが多い。
家族が起こした犯罪について、それを謝罪するようなところを見たことはない。

サンパウロ市内のあちこちにある刑務所の前には、いつもそういった家族の人たちが面会に訪れて門前市をなしているのを見ることが出来る。

刑務所の暴動が起きたときも、刑務所の前には家族達がいっぱいやってくる。
このような暴動で、家族が怪我をしないか心配してやってきている。

でも、往々にして彼らの家族は暴動に参加しているはずなのである。
家族が、その家族も含まれているはずの暴動参加者に、暴動の中止を呼びかけるような様子を見たことがない。

こういうときにも、家族の一員はまるで被害者であるかのようなのである。
ひどい環境の中におかれている可哀想な人なのである。

警察が鎮圧をするために、刑務所に次々とやって来る。

その時に、多くが女性である門前の家族は警察車両に向かって
罵声を浴びせ、時には石を投げるのである。
「20060515JNsp-Prisao.wmv」をダウンロード

家族にとって、警察は全くの対立関係にあるわけだ。

もちろん、刑務所に鎮圧にやってきた警察も、集まった家族に暴動の鎮圧状況を逐一発表することもない。

こういう存在であるのが、ブラジルの警察というのも事実である。

ただ、ここに集まった家族がブラジルの全ての階層を代表しているわけではない。
常に権力に抑圧されているか、抑圧されていると思っている階層の人たちである。

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ブラジルを、理解するには、一つや二つの画像や映像ではとても足りない。
十や二十の報道でも足りない。

報道される数え切れない事実が、社会のどこで起きているのかまで知る必要がある。
そうでないと、ブラジルを一面的に見てしまうのである。

ブラジルは強烈なコントラストの国である。
光は眩しく、闇は暗い。

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