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sábado, 6 de maio de 2006

ブラジル・サンパウロの裁判

この3日間、ブラジル・サンパウロ州のイビウナという小さな街は、ある裁判で、全ブラジルの注視するところとなった。

イビウナという街は、サンパウロ市の西60キロにある田園都市である。
小農場が多く、そこには日系人も多くいて、市長が日系人であったこともある。

サンパウロから近いことから、富裕層の農場や別荘も多いところである。

この街で、6年も前に起きた殺人事件の公判がやっと開かれた。

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事件は、2000年8月20日に、馬の育種場で起きた。

アントニオ・ピメンタ・ネヴェスAntonio Pimenta Nevesという、当時はサンパウロの一流紙であるO estado de Sao Pauloという新聞の役員で、経済部長が、同じ職場の部下で、3年間愛人であったサンドラ・ゴミーヂSandra Gomide(当時32歳)を射殺したのである。

殺人を犯せば逮捕され、裁判の間、ずっと拘置されるのが日本の常識である。

ところが、この被告は、裁判の日まで、サンパウロ市の南部の豪邸で暮らしていた。

そして、今日5月5日に、有罪となり、19年2ヶ月12日の刑が宣せられた。

でも、このアントニオ・ピメンタ・ネヴェス69歳は身柄を拘束されることなく、そのまま自分の車で自宅に帰った。

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ブラジルでは、貧乏人と金持ちと大金持ちがいる。
他にはいないと思っている。

貧乏人は、お金もないし、権利もない。
金持ちは、お金はちょっとあるが、それほど権利もない。
大金持ちは、お金はあるし、権力もある。

貧乏人は、ブラジル中にいっぱいいる。

金持ちは、サンパウロのような都市に多い。
大抵のホワイトカラーは、ここに位置する。
小金持ちの日系人もせいぜいこのあたりだ。

大金持ちは、給料の他にもいっぱい収入がある。
一族みんな金持ちだ。
友人も金持ちだ。
そして、社会の各層のトップにいる人ばかりだ。
やりたいことは、何でもそのつながりで出来るような人ばかりだ。

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このアントニオ・ピメンタ・ネヴェスも、大金持ちの1人だったようだ。

逮捕され7ヶ月拘置されたあとに、保釈(拘置所の外で、裁判を待つこと)申請をして、それが2001年3月に認められた。
ブラジルでは、逃亡の恐れがないなどの理由で、こういうことが認められる。
ただし、優秀な弁護士を使い、政治力を発揮しなければならない。
こういう人たちは、裁く方も裁かれる方も、みんな同じ階層に生まれつきいるのだ。
成り上がってきたものは、とてもそこまで届かない。

貧乏人では、弁護士も国選弁護人になり、そこまでやってくれるわけもない。

ブラジルでは、正義も、お金次第といってはちょっと言いすぎだが、それもあながち嘘でもない。

一審で有罪になっても、上級裁判所へ控訴をする権利がある。
今日の裁判官もそのところはよくわかっていて、刑期の宣告をしたときに、直ちに身柄の拘束とはしなかった。
身柄を拘束としても、また2審までのあいだに保釈申請を申請するだろうし、それが認められると知っているからである。

2審がいつ始まるか、全くわからない。
また6年後かもしれない。

それまで、豪邸で暮らしていくわけだ。
海外に行くもの自由だろうという。
普段と変わらず、暮らしていけるのだ。

そして、2審では再び有罪となることは確実で、刑期も宣せられるだろう。
でも、その時にはアントニオ・ピメンタ・ネヴェスは70歳を超えている。
来年70歳だからだ。

そうすると、刑そのものの執行が、「自宅を刑務所とする」ことになるかもしれない。

それが、優秀な弁護士の狙いだという。

有罪は明らかで、無罪には出来ない。
でも、事実上「無罪」のようなものだ。

なにをやっても死んだ者は帰ってこないのだが、これでは罪を償うということとはほど遠い。

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「無実の可能性」がある者が、冤罪で何十年も拘置されることもある日本。
方や、このようなことも起こりうるブラジル。

正義とは何だろう。

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ブラジルの裁判では、ちょっと信じられないような「強弁」や「詭弁」が、恥ずかしくもなく「弁論書」にでてくることがある。
とてもまともな教養ある人間ではやらないと思うのだが、そういったことまでやるのがここの弁護士である。

それで何とかなれば、職業的な名声が上がり、新たな上客がでてくる可能性が高まる。

実際、ここの法廷文書は、かなり難しい。
同じ様な単語を延々と書き連ねてくるし、全く修辞学の大家ばかりだ。

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もちろん、ブラジルにも社会正義のために働いている人も多いのはいうまでもない。

日本よりも、スローガンとしても、目標としても、その意識が高いかもしれない。
それだけ、矛盾が多いこともあるだろうが。

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