ブラジル・サンパウロでの警察への攻撃 その5 いまそこにある危機
何回も書いていることだが、拙宅はサンパウロの中心部に近いパカエンブー競技場がある一行建て住宅専用地区にある。
この地区には、住宅以外は何も無いという、静かなのだが、生活にはある意味で不便なところである。
何をするにも、何を買うにも、どこかに行かなくてはならないからだ。
隣の地区が、サンパウロでも屈指の高級アパート街のイジェノポリス地区である。
ここはアパートもあるが、商店やレストラン、銀行、病院などもある。
この地区の中心に、ブエノスアイレス公園といってそう大きくないのだが落ち着いた公園がある。
徒歩で10分くらいところだ。
今日(5月15日)13時前のローカルニュースを見ていた。
ワールドカップ・ドイツ大会へ招集するブラジル代表選手の発表もそこそこに、今日は「サンパウロの騒乱状況」のニュースが何度も臨時で流れるあわただしい日なのであるが、ローカルニュースもその枠が全て、一連の事件のニュースであった。
ニュースの最中にも入ってくる事件発生のニュースに合わせて、ヘリコプターが飛び回り映像を映していた。
ニュースの終了間際に、イジェノポリスHigienópolis地区でも警察車両が乱射されたという報道があり、上空からの映像が映し出された。
見知ったところが写っていた。
ブエノスアイレス公園の北西端付近であった。
そのころから、警察車両が走り回り始めた。
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報道ではこうなっていた。 Folha de Sao Pauloより。
「イジェノポリスで警察車両が銃撃。 学校は予定を変更」
市民警察の誘拐事件担当部DAS(Divisão Anti-Seqüestro)の車両が、月曜日に、イジェノポリスHigienópolis地区(サンパウロの西部の高級地区bairro nobre)のブエノスアイレス公園praça Buenos Airesの上の方のマラニョン通りrua Maranhãoで銃撃された。
誰も怪我をしなかった。
当初、情報では警察官が1人撃たれたというものであったが、州の公共安全部はこれを否定した。
この地区の歴史ある学校、リオ・ブランコRio Branco校とシオンSion校、は学校の安全レベルを高めた。
シオンSion校は課外の活動を止め、午前部の生徒は午後には下校となった。
午後部の生徒の授業は通常通り行われる。
シオンSion校には1100名の生徒がいる。
リオ・ブランコRio Branco校には、1800名の生徒がいるのだが、広報担当者と通じて、午後部の生徒は両親もしくは責任者が引き取りに来た時に下校させると発表した。
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この両校は、イジェノポリス大通りに面した由緒ある建物の学校だ。
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早速ではないが、14時半頃でかけてみた。
取材魂がうずいたのだ。
イジェノポリス地区を貫くアンジェリカ大通りは人がやや少ない。
いつも高齢者でいっぱいなのだが、明らかに少ない。
このアンジェリカ通りには、警察署がある。
拙宅から一番近いスーパーの前になる。
警察署の前は、交通規制が敷かれ、警察官20名ほどがいた。
どの警察官も、例外なく自動拳銃をもち、それもホルダーに入れているのではなく、手に持っていた。
軽機関銃やショットガンを持った警察官もいた。
犯罪組織の狙いはこういった警察署なのだから、警察官達も必死だ。
歩いている人たちも、足早に通り過ぎる。
ブエノスアイレス公園もほとんど人がいない。
いつもなら、犬の散歩をする人や家政婦を連れて散歩する高齢者、生徒などでいっぱいなのだが、今日はホームレスのような人だけだった。
ブラジルでは、地域の事情通は、バールかバンカ(=新聞雑誌売り場)の人だ。
人が出入りするので、色々と知っているのだ。
聞いてみると、こういう説明をされた。
アンジェリカ大通りの一本と平行するイタコロミ通りに止めてあった車から多数の武器が見つかった。
やはり、アンジェリカ大通りの警察署を襲撃する計画があったようだ。
それで、警察が周辺のパトロールを強化している中で、銃撃があった。
なんだか、やはり薄気味悪いので、ブエノスアイレス公園を抜けて、出来るだけ安全そうな道を通って帰った。
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今日は、市内のバスが襲撃を受けたので、朝からバスの運行がかなり減っていた。
通常は、市内へはいる車はナンバープレートの末尾の番号で規制があるのだが、今日は解除された。
バスがないので、車で行くしかないからだ。
そのためか、拙宅の近くのパカエンブー競技場の横を通る市内中心部から市内北部へ抜ける道路は16時半頃から大渋滞になっている。
いつもは絶対に渋滞しない。
サッカーの試合があるときだけだ。
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よく考えると、すぐそこには危険があった。
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過去に、世界各地の戦争地、紛争地に行ったことがあるので、「銃」を見ることには慣れている。
銃口を突きつけられたことも、撃たれたこともある。
どうしてこんなめ目に遭わなくてはならないのかと思ったことも、当時は思ったこともあった。
たかだか普通の仕事のためにだ。
そういう体験をする度に、普通の日本の暮らしには戻れなくなってきたと思ったこともあった。
日本の普通の人には、誰にもわかって貰えなかったからだ。
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Comments
Sao Pauloさんはすごい体験をしてこられたんですね。
日本がいくら「安全神話崩壊」といったところで、ブラジルのこういう状況をみると・・・。NHKでもこの件に関する報道が少しあったみたいだけど、軽い感じだったみたい。
気をつけてください!
Posted by: Batatinha | terça-feira, 16 de maio de 2006 08:42
>Batatinha様
世界には、もっともっと大変な日常に生きている人がいることを知ってしまうと、今回のサンパウロの騒ぎもたいしたことないように思えてしまいます。
ますます、感覚が日本では通用しないものになってきます。
一応、今回は収まったようです。
でも、20年前のサンパウロの方が、毎日の生活が怖かったです。あのころは今よりも治安が悪かった。
Posted by: Sao Paulo | quarta-feira, 17 de maio de 2006 12:36
上の記事を読んで、何でなのか、暗黒街道に走るしか無かった日本の普通のサラリーマンが主人公の物語を思い出してしまった。
ブラック・ラグーン
http://ja.wikipedia.org/wiki/BLACK_LAGOON
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4091572014/qid=1147882148/sr=1-2/ref=sr_1_10_2/503-5782333-7510322
http://www.blacklagoon.jp/top.html
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D6%A5%E9%A5%C3%A5%AF%A1%A6%A5%E9%A5%B0%A1%BC%A5%F3
上のリンクにもありますが、日本で今結構な売れ行きなのに、あんまりにも過激な内容なので映像化出来ないと言われたのに、なぜかあっさりアニメ化された漫画です。
荒唐無稽なオタク向けのオタク漫画なのに、なぜかリアリティがあると舟戸与一氏が絶賛したそうですよ。
Posted by: さりーと | quarta-feira, 17 de maio de 2006 13:16
>さりーと様
当地にいる日本人にも普段NHKの衛星放送しか見ていない人がいるようで、そちらで自分の足下で起きていることを知った人がいたようです。 知らなくても何とかなった程度だったということがよくわかるエピソードですけど、テレビを見た人の方がむしろ驚いたということでしょうか。それも、何かサンパウロに関係がある人だけでしょうが。
とりあえず、平静になったようです。
ただ、こういうことが無くてもサンパウロ州では毎日何十人かはどこかでなくなっているわけですけど。ブラック・ガグーンが始まったことに、ちょっとだけ読んだことがあったのですが、その後はどうなったか知りません。
さすがに会社から刺客が来た人は知りませんが、見捨てられたような人はいっぱい知っています。
Posted by: Sao Paulo | domingo, 21 de maio de 2006 16:14