ブラジル・サンパウロのグラフィッチ(壁絵) その275 Os gêmeos 134。
ブラジル・サンパウロの中心部に多いグラフィッチ(壁絵)。
ブラジルでは、あの壁絵の類をグラフィッチGrafittiと呼ぶ。
サンパウロの数あるグラフィッチの中でも、もっとも絵画的に鮮やかで、
かつ、その地域にマッチしている作品を描き続けている作家は、何と言っても、
有名なパンドルフォ兄弟である。
二人は、双子のなので、
Os gêmeos(=双子の意味)と名乗り、作品のそばに署名を残している。
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このOs gêmeosについては、
雑誌Pen誌で、
すでに2005年にとり上げられている。
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パンドルフォ兄弟は、多作である。
国際的に有名になった今でも、描き続けている。
彼らの多くの作品は、かなり治安的に問題があるところにある。
サンパウロ市の中心部周辺のカンブシCambuci、リベルダーヂLiberdade、ベラ・ヴィスタVela Bistaのそれも低地地区にほぼ集中している。
カンブシは彼らの出身地区で、各ブロックごとに、作品があるといえるくらいだった。
2008年から、パンドルフォ兄弟の作品のみならず、
サンパウロ市内で次々とグラフィッチが、
サンパウロ市当局によって、執拗に塗りつぶされ続けていった。
過去に紹介してきたグラフィッチ作品はもうかなりなくなっている。
作品の撮影には、かなり手間暇がかかったところもある。
作品を発見しても、その時は周囲の治安の問題などで、撮影不可能と判断して、
最適な撮影場所やタイミングを求めて、何度も通ったところもある。
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最初の作品は2月に発見していたのだが、その後にもそのあたりに新たな作品が描かれていったところがある。
今まで紹介した中でも、撮影のためにもっともその胆力を必要とした作品群である。
作品があった場所は、
サンパウロ市の歴史的中心部セントロとその西側のコンソラソン地区の境にあるフランクリン・ルーズベルト広場の地下を通っている、サンパウロの東と西を結ぶ大幹線道路のラヂアル・レスチ・オエスチという道路壁である。
このラヂアル・レスチ・オエスチは、
フランクリン・ルーズベルト広場の部分だけが、地下化されているが、そのほかの区間は高架道路になっている。
最初2月中旬に見つけた作品は、
地下トンネルから高架道路に移行する部分の道路壁にあった。
自動車専用道路であり、だいたい時速60キロ以上で通過するところなので、車の中から走行中に、うまく撮影することは難しいところである。
渋滞していれば、その作品の前に止まったときに撮影も可能であるが、朝は渋滞はないし、事故でも起きないと昼間はここまでは渋滞しない。 夕方のラッシュ時では、おそらく光量が足りない。
この先、数百メートル先の出口で高架道路を降りて、この作品があるところまで、わざわざ戻った。
戻って、近くに車を止めて、写真を撮ることができるポイントを探したのだ。
作品を発見したら、すぐにでも写真を撮っておかなければ、翌日にはもう消されている可能性があるからだ。
特に、このような道路壁に描かれたような場合は、その可能性が非常に高いと思った。
この作品は、コンソラソン通りのすぐ脇にある。
それで、コンソラソン通りの上から、見下ろす形で、場所を変えながら撮影をした。
だが、作品を綺麗にとるには距離があるし、おまけに角度が悪い。
できるだけ正面から撮影したいのだが、正面に当たるところは、作品からは道路越しになるので、距離がある。
それでも、作品のとりあえずの撮影をしたことで、撮影前に消されてしまうよりは、まだ良いと思った。
作品ある場所を撮影して、その写真をじっくり見ていて、作品の前まで歩いていける可能性があることに気がついた。
道路壁と道路の間に、幅が約1メートルの隙間があるのだ。
そこまで、歩いていけば、作品の正面から接近して撮影できるのではないかと思ったのだ。
発見した翌日に、その考えを実行に移した。
そして、ないことがわかり、
高架道の下から、その隙間を確認した。
問題は、高架道路の下には、少なからぬ住民がおられることであった。
その方々に、刺激を与えぬよう、恐怖感を与えぬようにしなくてはならない。
彼らは、見知らぬ人の接近を非常に恐れるのである。
彼らの方を見ずに、といって警戒を怠ることなく、
ささっと目的の方向に歩いて、
彼らに何かをするのではないと思わせた。
そうして、作品の方へ近づいていったのだが、
実は、その隙間は異常な臭気がした。
つまり、そこは、彼らの排泄場所であったのだ。
完全に周辺から見えるところなので、
いつも使っているわけではないだろうが、
長年のそれが溜まり、強烈な臭いを発していたのだった。
疾走する車の人は、何をしているのかと思ったことだろう。
撮影した後は、元には戻らず、
地下部分の歩道を歩いて、アウグスタ大通りからの入り口を逆に伝って、上にでた。
これだけ、
苦労した後で、思い出したのだが、
このルーズベルト広場より西側の高架道路部分は、日曜日は車は通行止めになり、歩行者天国になるのだ。
つまり、日曜日になれば、もう少しゆっくりと、それも車が通らない車道からでも、撮影できるのである。
それで、また日曜日にも撮影に出かけた。
西から来た高架道路が、コンソラソン通りへでる出口から歩いて入り、車道を歩いて、作品のところまで行き、撮影をした。
車道からでは、フェンスがあるので、実際はうまくとれないことがわかった。
そのフェンスを入れないようにするには、かなりの広角レンズが必要だった。
日曜日のトンネルは、車も少なく、休日をゆっくりと過ごす住民が非常に多いようだったので、あまり奥には入らないようにした。
このあたりの高架道路の歩行者天国は、日曜日の午前中は意外と人が少なく、逆にそれが今ひとつ落ち着かないところであった。
場所柄、ゲイのカップルの健康的なが多かった。
この作品がある地点から北側の一帯は、平日の昼間をのぞいては、あまり雰囲気の良いところではない。
路上生活者はやたら多いし、
いずれ紹介するがおかまの大出没地でもあり、
それに、麻薬の末端の売人も、昔から非常に多いところである。
夜は、とても歩けるところではない。
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