ブラジル・サンパウロの「中古車屋」
ブラジル・サンパウロの街を中心部から、郊外に向かって20キロも行くだけで、ブラジルの社会の抱えている色々な格差を実際に感じることが出来る。
車もそうだ。
中心部に近い高級住宅街ジャルジンスには、輸入車の販売店がずらりと並び、それらの多くは防弾仕様となっている。
そして、そのあたりを走っている車には、そういった輸入車も見かけるし、普通の車にしても新しい車が多い。
だが、郊外に向かって走るにつれて、輸入車などは全く見なくなる。
車も徐々に、古い車が増えてくる。
塗装があせた車。
ライトやバンパーなどがない車。
バックミラーがない車もある。
ヘッド・レストのない時代の車も走っている。
周囲がそういった車ばかりになったと気が付いたら、一刻も早く引き返した方がいい。
ブラジル・ポルトガル語では中古車をCarro Usadoといい、直訳すると「使用した車」である。
しかし、このところ比較的年式が新しい車についてはCarro semi-novoなる言葉を販売店は使っている。
準新車とでもいうのだろうか。
中古車には違いない。
以前は、中古車の価値はなかなか下がらず、時には新車よりも高いなんていうときもあった。
新車の売り惜しみをしていた、超インフレ時代のことだ。
その時に比べると、今は中古車価格の低減率は高いが、日本では考えられないくらい古い車でもちゃんとした市場価格がある。
毎週日曜日の新聞には、乗用車では1995年から、商用車では1990年の車からの価格表がでている。
ブラジルでは、自動車にかけられる税金が極めて高く、ブラジル製の本田フィットでさえ新車では日本円に換算すると300万円もする。
所得格差の大きなこの国で、そのフィットの新車を買うのは中流の上でも大変なことなのに、ましてそれ以下の層には永遠に不可能なことである。
どうしても中古車しか買えない人が多いのである。
5年落ちが買えただけでも、かなり新車なのである。
ブラジルでは、新車も高いが、毎年車に掛かる税金も高い。
車が古くなるに連れて徐々に税率が下がってくるので、このことも中古車の需要を一定の水準にしているともいえる。
そして、この税金は車歴20年以上の車にはかからない。
それ以上の車は、毎年強制保険だけを支払えばよいのである。
20年以上の車なんかと思われるかもしれないが、
これがちゃんと販売されている。
サンパウロ市の周縁部に行けば、そんな中古車屋ばかりである。
72年の車なんか買っていく人がいるのかと思うが、いるのだろう。
あまりに古いと、修理費の方が高いのではないかとも思うが、
電子部品の多い今の車とは違い、
作りの単純な古い車なので修理しやすいこともあるのだろう.
そういったところには修理屋がごまんとある。
とても安く修理してくれる。
ただ、またすぐに壊れる。
このような車でも、自分の家の車に乗っている子供はとても晴れがましそうだ。
Recent Comments